2019年12月23日月曜日

IWM-DUXFORD ダックスフォード帝国戦争博物館 -コメット&レストラン


キリスト教国家であるイギリスはクリスマスが近くなると日本の元旦と同じく実家に帰省し家族でゆっくり過ごすのが一般的だ。クリスマス当日は公共の交通機関もお休みになので、旅行者は気をつけよう。

さて、2019年最後の記事は、第1回目で取り上げたダックスフォード帝国戦争博物館の補足説明をして終わりにしようと思う。


デ・ハビランド DH.106 コメット



IWMダックスフォードのAir Space館には世界初のジェット旅客機「コメット」が展示している。この機種は就役後2度の空中分解事故を起こし、事故原因の調査が徹底的に行われた結果、与圧キャビンの膨張と収縮による金属疲労が原因だと特定される。この調査は後のジェット旅客機の設計に影響を与えると共に破壊力学と言う分野の発展に大いに貢献した。


それでは、皆様を機内にご案内しよう。

コックピット


左手奥が機長席、右手奥が副操縦士席
航空機関士席

航空士席

コックピットクルーはパイロット2人(機長、副操縦士)、航空機関士、航空士の4名。今では数を減らしているアナログ計器が目に付く。

キャビン


空の旅は軍人か上流階級だけのものだった

天井は開放的となっている

窓はカーテンで遮光していた、また手荷物棚は現在の旅客機の様な密閉式ではなく、バスや鉄道の様な解放式を採用している。

座席



座席は2-2配列で簡易リクライニング機構及び灰皿付き、テーブルは中折れ式で前席の背面に収納されている。当時からラックレール上にシートを固定するなど、現在の旅客機に通じる物がある。

化粧室



鏡は本物の木材を使った重厚感ある作り、便座の蓋にはクッションがついている為、蓋を降ろした状態で座る事が可能。

レストラン


The Armoury Cafe

The Workshop Restaurant

ダックスフォードには食事が頂けるお店が2件(The Armoury Cafe, The Workshop Restaurant)、温かい飲み物が飲めるカフェが1件(The American Air Museum Cafe)存在する。
食事のメニューはどちらも同じだが、The Workshop Restaurantは繁忙期のみの営業となっている。ここでは一般的な英国料理を頂く事ができる。味は決して不味く無いので、安心して食べられる。



遊具



読者の中に小さいお子さんをお持ちの方がいらしてもご安心、この博物館には小さいながら、子供が安心して遊ぶ事ができる遊び場がThe Armoury Cafeのすぐ隣に設けられている。夏休みの天気の良い日などは大勢の子供等で賑わっている。対戦中の爆撃機を模した遊具は男の子に大人気だ。

おわりに


12月12日に第1回目の投稿をしてから数えて14回目、ここまで筆者の拙い記事を読んで頂き有難うございます。この投稿を持って2019年最後とさせて頂きます。本当にありがとうございました。

2020年が皆様にとって良い年であります事をお祈りしてます。


IWM-DUXFORD ダックスフォード帝国戦争博物館 -Land Warfare


第1回の投稿で紹介したダックスフォード帝国戦争博物館の展示物から、前回の記事で紹介出来なかった部分の補足解説になります。

ダックスフォード帝国博物館に関しては第1回の記事を参考にしてください。

さて、今回解説するのは航空機の展示がメインのダックスフォードでは異色の存在。Land Warfare (陸戦)館をご紹介。



ここでは、第二次世界大戦から現代に至るまでのAFVや火砲を展示している。航空機の展示はイギリス、アメリカ両国の航空機が多いのに対し、陸戦では対戦国のドイツやイタリア、仮想敵国だった旧ソ連を含むワルシャワ機構軍の装備も多数展示している事が魅力的だ。


展示方法は映画のセットの様に小道具と共に展示されている為、写真は撮りにくいが、映像作品の様な雰囲気を楽しむ事ができる、

展示物


ヤークトパンター (Sd.Kfz. 173)



第二次世界大戦末期にドイツで開発された8.8cm砲搭載の駆逐戦車。駆逐戦車と言うのは平たく言うと、対戦車砲塔を戦車の車体に載せ移動をできる様にした車両の事を言う。駆逐戦車が生まれる前は対戦車砲をトラックに牽引して移動していたが、迅速な移動が困難な為、この様な駆逐戦車が作られる様になった。


この車両は側面装甲の一部がカットされており、車内を覗く事ができる。因みに正面には劣るものの側面装甲でも50mmの鉄板を水平方向から60度傾けた構造となっている。


この駆逐戦車は敵戦車に撃破された数より燃料不足や履帯の損傷より遺棄される事が多かった。

三号突撃砲 (StuG Ⅲ)



駆逐戦車と同じ様な外見をした突撃砲と言う車両がある。駆逐戦車が対戦車戦を目的として戦車部隊に配属されるのに対し、突撃砲は砲兵隊に所属し歩兵の援護が主な仕事だ。もっとも、末期のドイツ軍では慢性的な戦力不足から、異なる用途で使用される事も珍しくなかった。
ヤークトパンターの隣に以前は三号突撃砲が展示していたが、残念ながら現在は搬出されてしまった。行き先はまだ分かっていない。



軽駆逐戦車ヘッツァー



ドイツ占領下のチェコBMM社が、同社の38(t)軽戦車をベースに開発した軽駆逐戦車。非常に安価で生産性に優れていたが、三号突撃砲よりひとまわり小さい車体に同程度の48口径75mm砲主砲と傾斜装甲を採用した為、車内は非常に狭く現場からの評判はあまり良くなかったみたいだ。



MG-42やパンツァーファウストで武装した随伴歩兵の人形と一緒に展示している。

Tiger Ⅰ (もどき)


今なおプラモデルや映像作品で人気の高い旧ドイツ軍の重戦車タイガー。イギリスには世界で唯一走行可能なタイガーⅠ型がホービントンにある戦車博物館に保存されている。
これは映画の撮影用に作られたレプリカ。この車両が出演したのは1998年公開スティーブン・スピルバーグ監督制作の戦争映画「プライベート・ライアン」だ。映画好きな人はご承知かもしれないが、戦場の臨場感とストーリーのフィクション性が良いバランスを取れている名作だと思う。

Sd.kfz.302 ゴリアテ



旧約聖書に登場する巨人ゴリアテの名を与えられたこの兵器は名前とは対照的に全長約1.5mの小さな爆薬輸送車。詰まるところ、ラジコンに爆薬を積んで対戦車兵器とした様な代物だ。ソ連では犬に対戦車地雷を装備した地雷犬が実戦投入されたが、どちらも期待された程の戦果をあげる事は無かった。


IS-2 (JS-2)



独ソ戦初頭、ソ連軍は日に日に重装甲化して行くドイツ軍の戦車に頭を悩ませてた。特にタイガーIの装甲はソ連の新型対戦車砲だった85mm砲を持ってしても貫通する事は出来なかった。そこで、野砲である122mmカノン砲を改造し、砲塔内に納めたのがこのIS-2である。無理な設計が災いして決して扱いのし易い車両では無かったが、122mm砲の威力は凄まじく、計3500両が生産された同車はソ連軍の快進撃を後述のT-34と共に支えた。

 初期の車体は操縦席のスリットを撃ち抜かれ撃破される事が多かった為、
後期型(1944年)から固定式のスリットに変更している

 転輪は鋳造製

砲身が長い為、戦闘時以外は砲塔を背面に回していた

T-34-85



ソ連では大祖国戦争と呼ばれる第二次世界大戦の一連の戦闘において敵からも味方からも傑作戦車と名高いT-34。傾斜装甲や不整地走行、メンテナンスのし易さ等、数々の教訓を残した本車は当時のソ連軍戦車部隊の象徴と言っても過言では無い。
この車両は85mm砲を搭載した後期型。



興味深い事にソ連兵が手にしているのはドイツ軍のMP40


走行イベント



建物の裏手にはAFVが走行可能なフィールドが広がっている。夏期シーズンには走行イベントが実施されるので、博物館の公式サイトでイベントをチェックしよう。



この場所にはレストア待ちなのか、はたまた部品取りの為なのか屋外で朽ちていく車両等を見る事ができる。


2019年12月22日日曜日

鉄道乗車レポート イタリア編 第1回 ETR575


芸術と美食の国イタリア。ブーツのような形をしたイタリア半島は主要な都市が一直線上にある為、鉄道による都市間交通が盛んなエリアだ。このシリーズではそんなイタリアを走る個性的な列車達を紹介していく。

第1回目はイタリア国鉄の民営化後のオープンアクセス制度を利用して旧国鉄のトレニタリア に殴り込みを入れた新興会社NTV社のフラッグシップであり、イタリア語で「イタリアの」を意味する「Itaro」のブランド名で知られるアルストム社製ETR575を紹介。

ETR575形はアルストム社が次世代TGVとして開発したAGVをベースとした列車で、様々な国へ乗り入れる事を前提として開発された列車だ。お膝元のフランスでは車両が高価な上、二階建てのTGVに比べ定員数で劣る為、採用が見送られてしまったが、現在はイタリアの大地を縦横無尽に走り回っている。将来的には国際列車の構想もある。

諸元


運行会社:NTV社
車両タイプ:動力分散式高速列車
製造メーカ:アルストム社
製造年:2008年〜
編成:11両編成(連接構造)
最高速度:360 [km/h]
軌間:1,435[mm](標準軌)

車内インテリア


Primaの車内

座席は最上級クラスのClub、一等車にあたるPrima、二等車にあたるSmartの三等制を取っている。日本で言う所のJR東日本のグランクラス、グリーン、普通車に似た扱いである。尚、イタリアの特急列車は一部の国際列車を除き全て全席指定制である。その為、ユーレイルパスなどの乗り放題チケットを持っていても事前に座席の指定が必要だ。因みにイタロはユーレイルパスで乗車する事はできない。

シート




Primaの座席は2-1の集団見合配置、シートは本革製でポルトローナ・フラウと言う老舗ブランドを採用している。同社は職人が厳選した皮製の家具を長年作り続けて来た事で有名で、現在は世界各国の航空会社のファーストクラスやビジネスクラスを監修している。

リクライニング機構は座面が前に迫り出すタイプの為、座席を倒しても前の座席の背ずりが後席を圧迫する事は無い。各席に欧州(英国を除く)で一般的なCタイプのコンセントが設置されており、電圧は220V。また、足元に小さいながらゴミ箱も設置されている。

車内サービス



Club及びPrimaの車内では、飛行機の様なドリンクとお菓子のサービスがある。因みにコーヒーは一杯ずつ豆から抽出する本格仕様。食にには全力を注ぐイタリアのこだわりが感じさせられる。お菓子はクッキーやタラーリ等から選べます。タラーリとはイタリア南部の伝統的な固焼きパンのこと。イタリアではお酒のおつまみとして一般的。

イタリアの鉄道について



遅延が日常的なイタリアンタイムや旧式の客車列車が一般的なイタリアの鉄道は時代遅れだ等と言われる事もある。イタリア人の友人らは1980年代で止まってるなどと評していた。しかし、各都市を結ぶ高速列車は非常に快適で、時間も正確になって来ている。英国と比較すると幾分も近代的なシステムだと感じた。

また、イタリアの鉄道は運賃が非常に安い事は旅行者にとって非常に嬉しい。今回乗車したミラノ-フィレンツェ間は€37.9(約¥4,500)に対し同程度の距離である東京-名古屋間をグリーン車で移動した場合、¥14,960円もする。しかも、新幹線のグリーン車では無料のドリンクサービスは現在行われていない(かつて東北新幹線などで行われていた例あり)。

総括


TGV系列の車両ときいて、最初は昨年乗車したClass 373の様に狭い車内と絶え間ない横揺れを警戒していたのだが、ETR475は揺れも少なく清潔感があり非常に快適な移動を提供してくれた。


2019年12月21日土曜日

White Rose (白いバラ)を追え!


鉄道発祥の国イギリス、そこには鉄道の黄金期を築いた往年の蒸気機関車達が今尚動く姿を見せてくれる。今回はそんな蒸気機関車の牽引する特別列車を追ったエピソードを時系列で紹介する。

イベント列車



イギリスでは動態保存されている蒸気機関車を用いたイベント列車が度々行われている。夏休みのシーズンに最も多く開催されるが、本格的な冬が訪れクリスマスが近づく11月〜12月にかけて再び活気を帯びてくる。

これらのイベント列車は、観光のみを目的とした保存鉄道と違い本線上を営業列車の合間を縫いながら運行される為、現役当時さながらの迫力のある走りを見る事が出来るのが売りだ。その為、乗車券は一ヶ月前には売り切れてしまう程のプレミアチケットだ。

動く博物館



イベント列車を牽引する蒸気機関車の多くは戦間期から戦後に製造された車歴80年近い機関車が担当する為、故障とは無縁ではいられない。特に当時使用されていた部品はリベット接合など現在では失われた技術を用いている為、一度故障をすると長期間修理に出される事も珍しく無い。
今回取材を行った2019年も蒸気機関車の故障の為ディーゼル機関車によって代走する日が何回か起こっていた。

運行情報


イギリスの鉄道会社は上下分離方式かつ列車の運行会社が乱立している為、今回のようなイベント列車も企画・運営する会社が何社か存在する。従ってイベント列車の情報を掴むには専門の情報サイトを活用すると便利だ。

・RAIL ADVENT:イベント列車や鉄道系ニュースの配信を行っている情報サイト
https://www.railadvent.co.uk※他サイトに飛びます

運行会社がネット上に公開している情報は停車駅の到着時刻と出発時刻のみで、通過駅の通過時刻や使用するホームの番号などは書かれていない。通過駅で写真を撮りたい場合、列車のリアルタイムの運行情報が分かるサイトを利用する。

・Realtimetrains
https://www.realtimetrains.co.uk/search/※他サイトに飛びます

・TrackIT
https://trackit.uppyjc.co.uk/TrackIT/Forms/LocationSearch.aspx※他サイトに飛びます

飛行機撮影でお馴染み「Flight Rader 24」の鉄道版と思って頂けると飛行機撮影家の方々は分かりやすいのでは無いだろうか。飛行機の場合は飛行機に搭載しているATCトランスポンダから発する電波を受信して位置情報などを知る事が出来るが、鉄道の場合は車上子と地上子で列車番号をやり取りする事によって得た在線状況(列車位置)を覗く事で知る事が出来る。


White Rose追跡作戦


2019年12月14日、Christmas White Roseと命名された2つの列車がロンドンのキングズクロス駅とイングランド中部にあるドリッジ駅からヨークに向けて運行された。

ロンドン便を担当するのは2008年に新造されたLNER社 Class A1 No.60163トルネード
ドリッジ便を担当するのは1950年に製造されたGWR社 Castle class No.7029 クランキャッスル

この情報を掴んだ筆者は同日朝、東海岸本線の特急に乗り込み一路ヨークを目指した


11:45

ヨーク駅1番線ホームからブリドリントン行のローカル列車に乗り込んだ



11:56

列車は定刻通りチャーチフェントン駅に到着した




筆者がここを撮影場所に選んだ理由は二つある。
一つは非電化区間の為、開放感のある写真を撮る事が出来る。
もう一つはヨークからほど近い分岐駅の為、停車する列車の本数が多い事だ。
実は、この駅とヨーク駅の間はUlleskelfと言う小さな駅がある。しかし、停車する列車が殆ど無い為、交通の便は悪い。また、Ulleskelfとヨークの間には東海岸本線が合流するColton Junctionと言う有名な撮影スポットがあるが、車でないとアクセスできない。

12:15

恐れていた事態が訪れた
今まで小雨だった天気が急変、ゲリラ豪雨と化したのである




冬季のイギリスは海流の影響で極端に晴天が少ない。快晴は1週間に1日くらいだろうか。

13:11

事前の運行情報通りWhite Roseは3番ホームに滑り込んだ




予定通りでは無かったのは大粒の雨と遅れていたヨーク行きの営業列車が White Roseがホームに入線するタイミングと被ってしまった事だけだった。

13:34

遅れていたヨーク行きのローカル列車に乗りWhite Roseを追った


13:49

ヨーク駅に再び戻ってきた
だが、一息つく間も無くそのまま鉄道博物館の駐車場へと急いだ


13:58

鉄道博物館の駐車場につくと、雨にも関わらずそこには鉄道ファンと関係者が詰め掛けていた




ドリッジからヨークまで走り終えたばかりのキャッスルクラスが給炭作業の為、鉄道博物館の駐車場にやって来たのはまさにその時だった

17:17

鉄道博物館を堪能し帰路に着こうとした刹那、ホームに見かけない客車列車が停車している

はやる気持ちを押え先頭車両の方に向かって歩いて行くと、

そこに居たのはドリッジへの帰路の準備をするキャッスルクラスだった



この日は突然の雨にも見舞われたが、キャッスルクラスの撮影を満喫した1日となった。

おしまい