第1回の投稿で紹介したダックスフォード帝国戦争博物館の展示物から、前回の記事で紹介出来なかった部分の補足解説になります。
ダックスフォード帝国博物館に関しては第1回の記事を参考にしてください。
さて、今回解説するのは航空機の展示がメインのダックスフォードでは異色の存在。Land Warfare (陸戦)館をご紹介。
ここでは、第二次世界大戦から現代に至るまでのAFVや火砲を展示している。航空機の展示はイギリス、アメリカ両国の航空機が多いのに対し、陸戦では対戦国のドイツやイタリア、仮想敵国だった旧ソ連を含むワルシャワ機構軍の装備も多数展示している事が魅力的だ。
展示方法は映画のセットの様に小道具と共に展示されている為、写真は撮りにくいが、映像作品の様な雰囲気を楽しむ事ができる、
展示物
ヤークトパンター (Sd.Kfz. 173)
第二次世界大戦末期にドイツで開発された8.8cm砲搭載の駆逐戦車。駆逐戦車と言うのは平たく言うと、対戦車砲塔を戦車の車体に載せ移動をできる様にした車両の事を言う。駆逐戦車が生まれる前は対戦車砲をトラックに牽引して移動していたが、迅速な移動が困難な為、この様な駆逐戦車が作られる様になった。
この車両は側面装甲の一部がカットされており、車内を覗く事ができる。因みに正面には劣るものの側面装甲でも50mmの鉄板を水平方向から60度傾けた構造となっている。
この駆逐戦車は敵戦車に撃破された数より燃料不足や履帯の損傷より遺棄される事が多かった。
三号突撃砲 (StuG Ⅲ)
駆逐戦車と同じ様な外見をした突撃砲と言う車両がある。駆逐戦車が対戦車戦を目的として戦車部隊に配属されるのに対し、突撃砲は砲兵隊に所属し歩兵の援護が主な仕事だ。もっとも、末期のドイツ軍では慢性的な戦力不足から、異なる用途で使用される事も珍しくなかった。
ヤークトパンターの隣に以前は三号突撃砲が展示していたが、残念ながら現在は搬出されてしまった。行き先はまだ分かっていない。
軽駆逐戦車ヘッツァー
ドイツ占領下のチェコBMM社が、同社の38(t)軽戦車をベースに開発した軽駆逐戦車。非常に安価で生産性に優れていたが、三号突撃砲よりひとまわり小さい車体に同程度の48口径75mm砲主砲と傾斜装甲を採用した為、車内は非常に狭く現場からの評判はあまり良くなかったみたいだ。
MG-42やパンツァーファウストで武装した随伴歩兵の人形と一緒に展示している。
Tiger Ⅰ (もどき)
今なおプラモデルや映像作品で人気の高い旧ドイツ軍の重戦車タイガー。イギリスには世界で唯一走行可能なタイガーⅠ型がホービントンにある戦車博物館に保存されている。
これは映画の撮影用に作られたレプリカ。この車両が出演したのは1998年公開スティーブン・スピルバーグ監督制作の戦争映画「プライベート・ライアン」だ。映画好きな人はご承知かもしれないが、戦場の臨場感とストーリーのフィクション性が良いバランスを取れている名作だと思う。
Sd.kfz.302 ゴリアテ
旧約聖書に登場する巨人ゴリアテの名を与えられたこの兵器は名前とは対照的に全長約1.5mの小さな爆薬輸送車。詰まるところ、ラジコンに爆薬を積んで対戦車兵器とした様な代物だ。ソ連では犬に対戦車地雷を装備した地雷犬が実戦投入されたが、どちらも期待された程の戦果をあげる事は無かった。
IS-2 (JS-2)
独ソ戦初頭、ソ連軍は日に日に重装甲化して行くドイツ軍の戦車に頭を悩ませてた。特にタイガーIの装甲はソ連の新型対戦車砲だった85mm砲を持ってしても貫通する事は出来なかった。そこで、野砲である122mmカノン砲を改造し、砲塔内に納めたのがこのIS-2である。無理な設計が災いして決して扱いのし易い車両では無かったが、122mm砲の威力は凄まじく、計3500両が生産された同車はソ連軍の快進撃を後述のT-34と共に支えた。
初期の車体は操縦席のスリットを撃ち抜かれ撃破される事が多かった為、
後期型(1944年)から固定式のスリットに変更している
転輪は鋳造製
砲身が長い為、戦闘時以外は砲塔を背面に回していた
T-34-85
この車両は85mm砲を搭載した後期型。
興味深い事にソ連兵が手にしているのはドイツ軍のMP40 |
走行イベント
建物の裏手にはAFVが走行可能なフィールドが広がっている。夏期シーズンには走行イベントが実施されるので、博物館の公式サイトでイベントをチェックしよう。
この場所にはレストア待ちなのか、はたまた部品取りの為なのか屋外で朽ちていく車両等を見る事ができる。
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