2020年10月8日、ブリティッシュエアウェイズ最後のB747-400である2機<G-CIVB>、<G-CIVY>が最後のフライトに出る為、母港であるロンドン ヒースロー空港を後にした。
<G-CIVB>はBA400便としてイングランド、グロスターシャー州ケンブルにあるコッツウォルド空港へ、<G-CIVY>はBA747便としてウェールズ南部にあるセント・アタン空港にそれぞれ向かった。どちらの機体も英国内で解体されるとみられている。
ラストフライトの模様は同社のFacebookで公開されている。
ブリティッシュエアウェイズの前身であるBOAC(英国海外航空)はパン・アメリカン航空、ノースウエスト航空、TWA、日本航空と並びB747のローンチカスタマーだった。BOACにとって初号機となる<G-AWNA>は1970年4月にやって来た。しかし、パイロットから「機体が大きい分、多くの給与を」と反発があり、約一年間フライトの遅れが頻発するようになった。この労使問題はメディアでも大きく取り上げられたそうだ。
1974年にBOACがBEA(英国欧州航空)と合併して社名がブリティッシュエアウェイズ(BA)になってからも747は同社の顔として飛んでいた。その後、改良型の-200B、-200BMを経て導入されたのが、「テクノジャンボ」こと-400だ。BOACとBAが受領した747シリーズは合計94機。内、最大の勢力を誇っていたのが-400で57機受領している。現在に至るまで世界最大の-400ユーザーだった。
因みに日本航空は747シリーズを世界最大の113機発注したが、2001年の同時多発テロやB777の登場に伴い-400は旅客型42機、貨物型2機にとどまった。
Fleet of British Airways
昨年末にロンドン ヒースロー空港で撮影した写真(過去の記事で公開した写真を含む)を交えて今回引退となった機体を一挙ご紹介します。因みにライン番号(LN)は何機目に製造された747かを示し、製造番号(CN)は機種によらない5桁の番号となっている。
G-BNLY (LN:959/CN:27090) ※Landorカラー復刻塗装
G-BYGA (LN:1190/CN:28855)
G-BYGB (LN:1194/CN:28856)
G-BYGC (LN:1195/CN:25823) ※BOAC復刻塗装
G-BYGD (LN:1196/CN:28857)
G-BYGE (LN:1198/CN:28858)
G-BYGF (LN:1200/CN:25824)
G-BYGG (LN:1212/CN:28859)
G-CIVA(LN:987/CN:27092)
G-CIVB(LN:1018/CN:25811) ※Negusカラー復刻塗装
G-CIVC(LN:1022/CN:25812)
G-CIVD(LN:1048/CN:27349)
G-CIVE(LN:1050/CN:27350)
G-CIVF(LN:1058/CN:25434)
G-CIVG(LN:1059/CN:25813)
G-CIVH(LN:1078/CN:25809)
G-CIVI(LN:1079/CN:25814)
G-CIVJ(LN:1102/CN:25817)
G-CIVK(LN:1104/CN:25818)
G-CIVL(LN:1108/CN:27478)
G-CIVM(LN:1116/CN:28700)
G-CIVN(LN:1129/CN:28848)
G-CIVO(LN:1135/CN:28849)
G-CIVP(LN:1144/CN:28850)
G-CIVR(LN:1146/CN:25820)
G-CIVS(LN:1148/CN:28851)
G-CIVT(LN:1149/CN:25821)
G-CIVU(LN:1154/CN:25810)
G-CIVV(LN:1156/CN:25819)
G-CIVW(LN:1157/CN:25822)
G-CIVX(LN:1172/CN:28852)
G-CIVY(LN:1178/CN:28853)
G-CIVZ(LN:1183/CN:28854)
G-CIVZ |
本来であれば、最終的な引退は2023年となる予定だった。2019年には3機の747に対し国際線運航100周年を記念した復刻塗装を施したばかりであった。
しかし、COVID-19パンデミックがBAの経営に与えた影響は大きく、2020年7月17日に突然の引退が発表された。つまり、代替えの新造機が来る2023年までに航空需要は回復しないだろうという見立てだ。COVID-19の影響があったのは当然飛行機だけではない。BAは2020年4月時点で最大12,000名の人員削減を発表しており、現在も人員削減を実施中である。
現在のところ、これらの機体が引退後どうなるかは明かされていない。すべて解体となる可能性が高いが、もし可能であれば一部でも博物館に保存して頂けたら嬉しいと筆者は思う。
在りし日の記憶
今では貨物機以外のB747は殆ど見られない日本の空港ではあるが、かつては「ジャンボの王国」と呼ばれる程、国内線・国際線共に747であふれていた。日本の2大キャリアであるJALとANAがそれぞれ747を運航していた2008年、筆者は羽田にあるANAの機体整備工場を訪れていた。
APU(補助動力装置) |
地表に立って眺めると機体のサイズに圧倒される |
トーイングされる747
トーイングカーに引っ張られゆっくり機体が移動する |
垂直尾翼の先端と格納庫のゲート上部がギリギリなのが分かる |
大きく機体を旋回させ格納庫前に駐機させる |
あとがき
技術の発展や需要の変化によって世界中に普及していた製品が一気に過去の遺物となってしまう事はどの世界においても起こることだが、それらが残した足跡を記録し残していく事は新しい世代に伝えていくうえで大切なのだと近々感じています。微力ではありますが、その時代を切り取った写真を残せるように努力していきたいと思います。
参考文献
「エアライン 2020年10月号」
出版社:イカロス出版、雑誌02043-10
「AFQR 2019」
出版社:Air-Britain、ISBN978-0-85130-514-1
「MODERN CIVIL AIRCRAFT:4 Boeing 747」
著:Peter Gilchrist, 出版社:IAN ALLAN, ISBN: 0-7110-2050-7
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