2020年10月2日金曜日

機械好き&廃墟マニア必見! 九州最後の炭鉱島 | 長崎県 池島

 


長崎県五島灘に位置する軍艦島(端島)が「明治日本の産業遺産」として、2015年世界文化遺産に登録されたことはまだ記憶に新しい。端島から北西に30km、西彼杵半島からほど近い位置にもう一つの炭鉱島がある。それが今回紹介する「池島」だ。


後に軍艦島として有名になる端島は三菱グループの炭鉱だが、ここ池島を含むエリアは三井グループの炭鉱があった。元は池島の北に位置する松島で採掘を行っていたが、1940年(昭和10年)に相次ぐ水没事故により松島炭鉱が閉山。代わりの拠点として選ばれたのが、西彼杵半島北部の大島だった。しかし、戦後の高度経済成長期に伴う石炭需要の高まりによって新たな炭鉱が必要となる。そこで1959年(昭和34年)より採掘が開始されたのが池島だった。

開発時期が新しい事もあり、1970年代を境に安価な海外産の石炭に押され国内の炭鉱が次々に閉山する中、1985年に産出量の最盛期を迎える。その後も着々と坑道を伸ばしていき、1990年代には坑道の総延長距離が96kmに達した。坑道が南西の沖合に伸びて行った為、1981年に第二立坑が完成。以後、それまで使っていた第一立坑は採掘機材の運搬に用いられるようになった。


第二立坑と女神の像


さらに、作業員の移動時間軽減のため1996年、ドイツから当時世界最速時速50kmの高速人車「女神号慈海」が導入された。この列車は2両の蓄電池機関車と4両の人車(客車)によるプッシュプル編成で運行された。ちなみにIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御で車体は軽量のアルミニウムを使用していた。当時は東京の京浜東北線でVVVFインバータ制御の電車(209系)が走り出したばかりであったから、如何に最新の技術であったかが窺い知れる。


しかし、これら最新の技術を持ってしても海外産の石炭との価格差は歴然で、2000年の構内火災事故により出炭量の減少が更に追い打ちをかけた。2001年3月には累積赤字は100億円を突破した為、これ以上の営業は困難となり同年11月29日をもって閉山した。


上から選炭工場、貯炭場、石炭船積み機(トリンマー)


炭鉱体験ツアー

写真は2019年6月のものです。COVID-19の影響で変更・中止している可能性があります



池島炭鉱は海底炭鉱の為、当時掘っていた坑道は既に海の中(完全に水没している)だが、閉山後に海外の炭鉱マンに掘削技術を教えるべく掘った研修用の坑道が残っている。炭鉱体験ツアーに参加するとその中に入ることが出来る。


定休日


毎週水曜日及び年末年始

※3日前までに要予約


料金


高校生以上:2,720円

小・中学生:1,360円

オプション:炭鉱弁当900円


集合場所

池島港

午前コース:集合11:00

午後コース:集合14:15


ツアーの流れ


人車に乗って坑道の中へ

坑道の中はひんやりと涼しいが、
実際の坑道は海底火山の影響で灼熱地獄だったと言う
ロードヘッダと呼ばれる採掘機
坑道の延伸に用いられた

ドラムカッター(中央)と自走枠
ドラムカッターは石炭を採掘する際に用いられ、
自走枠は採掘中に岩盤が落ちてこないようにする役目がある

参加者は採掘用ドリルの体験ができる

メタンガス測定器
鉱山で最も危険なのがガスの充満で
測定器が随所に置かれていた

エアーマント
事故発生時、シェルターへの避難が間に合わない場合、
このエアーマントを用いて救助を待つ。
上の黄色いパイプから酸素が供給される仕組み

選炭工場の上へと続くトロッコ軌道
ベルトコンベアが完成するまではトロッコで
地上まで石炭を運搬した



島内観光ツアー

写真は2019年6月のものです。COVID-19の影響で中止している可能性があります


先述の炭鉱ツアー参加者は追加料金を払うことでガイド付きの島内観光ツアーに参加することが出来る。ガイドが車で島内を案内してくれ、個人では入れない炭鉱住宅の中や第二立坑に行くことが出来るのでお勧めだ。


追加料金


高校生以上:450円

小・中学生:220円

所要時間


約2時間


ツアーの流れ


火力発電所跡
本土と結ぶ海底電線が切断されても自給出来るように建てられた
発電所の熱を利用した造水施設としての役割もある

旧市街・遊楽後
島の中央に佇む市街地は江戸時代から続く旧市街の跡地

ボーリング場跡(右)、商店街跡(左)

炭鉱住宅玄関
3交代制の勤務だった為、
夜勤明けで昼間に睡眠を取る人が多くいた

五畳半の畳部屋
畳部屋とリビングがあり、風呂は共用だった


第二立坑と蟇島(沖ノ島)
蟇島には二つの立坑があり坑道内へ空気を送っていた

炭鉱住宅から第二立坑へと向かう階段
炭鉱夫はこの階段を下りて出勤した
看板には炭鉱夫の挨拶である「ご安全に」の文字が

第二立坑正面玄関
第二立坑の建屋2階には高速人車等の制御を行う制御室が
1階には炭鉱夫のロッカーと大浴場、エレベータ乗り場があった

8階建て炭鉱住宅
ひときわ目を引く8階建の巨大住居は斜面に沿って建てられ、
5階と前述の階段が橋で繋がっている

5階連絡橋
因みにこの高層住宅は実写版「進撃の巨人」の撮影地として
候補に挙がったが、老朽化による倒壊の危険性がある為
撮影を断った事があるという

池島小中学校
現在も現役の学校で在校生徒は2020年現在、
小学校が1名、中学校が1名

島の新しい住民



人が居なくなった街には野良猫が住み着くようになり、まるで猫のパラダイスの様になっている。猫好きの人にはオススメなポイントだ。どうやら釣り客や食堂のお零れを貰っているらしく、都心より太った野良猫が多い。


池島の風景


選炭工場跡
採掘した石炭はベルトコンベアで斜面上まで上げられ、
そこから重力を利用し港まで降りる過程で選定する

第一立坑(左)とベルトコンベア(中央)

炭鉱住宅跡
数年もすれば緑に沈んでしまうかもしれない



アクセス



フェリーが神ノ浦港、瀬戸港、佐世保港から出ている。佐世保港からの便だけは一日に2便しか無いので注意が必要だ。船の時刻については下記のサイトを参考にして欲しい。

そとめぐり 池島へのアクセス


参考サイト


長崎きるく 池島炭鉱内体験ツアー

九州最後の炭鉱「池島」の外より

池島のページ

長崎市 児童・生徒数


参考論文


池島炭鉱におけるロードヘッダによる削進

松島炭鉱(株) 高橋 渡 氏、

(株)三井三池製作所 辻 和時 氏著


あとがき



2015年にNHKのバラエティー番組である「ブラタモリ」で紹介された池島。筆者は昨年(2019)の夏にこの島を訪れた。人口100名弱のこの島はゆっくりとした時の流れがあり、心を癒してくれる。COVID-19の流行が終息した暁にはまた訪れてみたい場所の一つだ。



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