2020年3月13日金曜日

王立空軍博物館 コスフォード (RAF Museum Cosford)


前回はロンドン郊外にあるRAF Museum Londonを紹介したが、今回はもう一つのRAFミュージアム "RAF Museum Cosford"を2回に分けて紹介する。

前回記事は下記参照
RAF Museum Londonについてはコチラ

アクセス



最寄駅のCosford駅はロンドンから電車で2時間程。直通列車は無いのでバーミンガム等で乗り換えが必要。駅から博物館までは徒歩20分程。一本道なので間違える心配は無い。


開館時間


11月1日〜2月29日
10:00-16:00
3月1日〜10月31日
10:00-17:00

※最終入場は閉館時間の30分前
※イベントや祝日等で閉館の可能性あり、公式サイトを要確認

入場料


無料
(寄付金歓迎)


エントランス



博物館のエントランスを抜けると、屋外に対潜哨戒機の展示がある。

SP-2H (P2V-7S)


アメリカのロッキード社が開発したP-2対潜哨戒機派生型の一つ。海上自衛隊が導入したP2V-7をベースに対潜装備及びECM機器の性能を向上した型。

BAE ニムロッド


ホーカー・シドレー社が先述のP-2を置き換えるベく開発した対潜哨戒機・電子戦機。因みに当初はNATO各国でブレゲー社(フランス)のアトランティックを採用する計画だったが、計画の途中でアメリカ、イギリス、ベルギーが離脱。アメリカはロッキード P-3を採用した。

世界初の旅客機DH.106 コメットをベースに開発された機体であるが、対潜装備(洋上監視レーダー、爆弾槽)の為に大きく膨らんだ胴体下部や機首から突き出すツノの様な空中給油受油装置はもはや原型機の姿を留めていない。また、この空中給油受油装置により機体の安定性が損なわれた為、水平尾翼に安定板が追加されている。

DH.106 コメットについてはコチラ

TEST FLIGHT



ここでは、航空機の開発で試作された試作機のみを展示している。イギリスの世にも奇妙な飛行機達が我々を迎えてくれる。

グロースター ミーティア F8 Prone Pilot


人間の耐G負荷を検証する為にイギリス初のジェット戦闘機ミーティアを改造して造られた試験機。パイロットはうつ伏せの状態で操縦する。しかし操縦性に問題があった為、以後同方式の操縦姿勢は採用されていない。


BAC TSR.2


ここの展示で最も存在感がある白い巨体はBAC社が試作した超音速機。短距離離陸(STOL)と核攻撃能力を兼ね備えた機体として開発された。性能は非常に良好で目立った問題は無かったが、当時の労働党政権はミサイル万能論による大幅な軍縮を断行した。これにより当機を含む数々の開発計画は白紙になってしまった。

機体側面にはユニット化された計測機器が収納されている
ブリストル・シドレー オリンパス 22R Mk.320

BAe EAP


BAe社が試作したEAP(Experimental Aircraft Program)はフライ・バイ・ワイヤ等の先進技術実証機。ここで得られた知見は後に国際共同開発となるユーロファイター タイフーンに受け継がれた。

WAR PRANES


アブロ リンカーン

ここでは第二次世界大戦までに活躍した航空機を展示している。前回紹介したRAFMロンドンと異なるのは、日本やドイツといった枢軸陣営の機体展示が多い点である。


メッサーシュミット Bf109 G-2


前回RAFMロンドンで紹介したBf109はダイムラー・ベンツ社製DB601エンジンを搭載するE型。この機はエンジンに同社のDB605エンジンを搭載した後期生産型。機体には砂漠迷彩塗装が施されている。

フォッケウルフ Fw190 A-8/R6


Bf109は非常に高性能な戦闘機であったが、高速を追求した余り機体は脆く、エンジンは大量生産には難があった。そこでフォッケウルフ社のタンク技師によって開発されたのが当機だ。機体は頑丈に造られ、エンジンはメンテナンスの容易な空冷星型エンジンを用いている。その使い勝手の良さから大戦後半ではドイツ軍の主力戦闘機にまで登りつめた名機である。

メッサーシュミット Me262A-2a


世界初のジェット戦闘機として有名な本機。翼下にターボジェットエンジン2機を搭載している。最高スピードは870km/hにも及び、当時のレシプロ戦闘機では追いつくことが出来なかった。しかし、戦局は既に連合国側に傾いていた為、戦局を打開する程の戦果は得られなかった。終戦後チェコスロバキアにおいて少数がアヴィア S-92の名で生産されている。

メッサーシュミット Me163B-1a


こちらは世界初のロケット戦闘機。機体は木製でエンジンは胴体に内蔵したHWK 109-509A-1液体ロケットエンジンによって推力を得る。詰まるところ、液体燃料式ロケットに人間が搭乗して操縦する様な代物だ。航続時間はロケットの燃焼時間である7分30秒しか無く、戦果は思った様に上がらなかった。

ユンカース Ju88R-1


爆撃機として開発されたが、汎用性の高さから雷撃、偵察、夜間戦闘機等様々な任務で使用された。しかし、防御力は貧弱だった為、バトル・オブ・ブリテンにおいて英軍によって容易に撃墜された。本館に収蔵されているのは夜間戦闘機型のC型にBMW 801エンジンを搭載したR型。

メッサーシュミット Me410A-1-U2


Me210を基に開発された複座の攻撃機。空中戦、軽爆撃、対艦攻撃、偵察任務など様々な任務に就いた。大戦末期になると日に日に増す連合軍機による戦略爆撃機を迎撃する為に用いられたが返り討ちに会うことが多く、製造メーカーは単発単座の生産に注力する事にした。

本館に所蔵されている旧日本軍機はどちらも世界で1機しか現存しない貴重な機体だ。

川崎 キ100 五式戦闘機一型


本機には陸軍の愛称や連合軍のコードネームは存在しない。本機は大戦末期、三式戦闘機「飛燕」の胴体に空冷星型エンジン「ハ112-II」を搭載し急造した機体だからだ。ドイツのFw190Aを参考にエンジンの換装を行った本機は意外とバランスが良くパイロットからの評判も高かった。風防は元々飛燕と同様であったが、最終生産型の99機は視界確保の為胴体後部を削り涙滴型の風防を備えている。本館で展示されているのはその内の1機だ。





三菱 キ46 一〇〇式司令部偵察機三型甲


高速長距離偵察機として開発された本機は大戦中の全期間を通して利用された。本館では「第二次世界大戦において最もエレガントな飛行機の一つ」と紹介している軍用機とは思えない優美な外見が特徴だ。当館で展示している機はエンジンにハ112-IIを採用した三型。マレー半島に配属されていた機体を戦後イギリス空軍が本国に持ち帰った機である。

COLD WAR



冷戦時代をテーマに爆撃機から核ミサイルまであらゆる装備の展示が充実している。詳細は次回の配信にてお伝えする。

あとがき

今回紹介したRAFM Cosfordはロンドンから比較的アクセスがし易く、前回紹介したロンドン館とは違った魅力が詰まっているので、おすすめのスポットだ。世界でここにしか存在しない貴重な展示品もあるのでイギリスにお越しの際は是非、立ち寄って欲しい。
次回は本館一の見どころ「COLD WAR (冷戦館)」をご紹介する。

参考サイト

ROYAL AIR FORCE MUSEUM -On display
RAFミュージアムに収蔵している展示品の解説が掲載されている。機体によっては音声ガイド(Podcast)もある。

参考文献

「戦闘機大百科 -第二次世界大戦編-」
出版社:株式会社アルゴノート, ISBN:978-4-914974-22-0

「Hobby Japan next 英国特集2017」
出版社:株式会社ホビージャパン, ISBN:978-4-7986-1578-3


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